今年も6月17日から1週間、バングラデシュに行ってまいりました。日本キリスト教保育所同盟が支援している就学前児童が通うプレスクールの視察と交流を兼ねた研修です。

 バングラデシュは、最近「アジア最貧国」を脱却し、発展途上国になったようです。確かに道路の整備は進んでいて、高速道路も機能してかなり便利になりました。首都ダッカ市内にはJICAが出資した「ダッカメトロ」という近代的な鉄道も走り始めました。もともと存在している外部からダッカに入ってくる鉄道は、屋根にまで人が群がるような凄まじい列車ですが、メトロは近代的な電車ですから乗客が屋根に登ることはありません。車内はエアコンが効いていて、自動改札まで導入されています。こうなると市民の足と言うより、アトラクション的な趣になります。だって、切符高いですから。

 急成長している様子は頼もしく思います。格差が広がっていく懸念は大いにありますが、着実に底上げされていっているように思いました。

 そうした変化の中で今回最も印象的だったのは、自立への意識改革です。実は、私たちの支援先からこれまでお付き合いのあった数名が姿を消しました。そのうちの一人から、別れの挨拶もしてないから会って話をしたいとの申し出があったので、訪問時に時間を作ってお会いし事情を聞くと、「事業を進めるためにはワイロなどが不可欠で、それがあればスムーズに事が運ぶ。しかし新理事長は、ワイロなどを排除しようという方針を打ち出したので、我々と意見が合わなくなった。そのせいで新規事業の認可が降りなくなったり、滞る。だから、意見が衝突した我々数名が辞めたのだ。」さもありなんと思いつつ、「今後のご活躍と、再就職先が早く見つかるよう祈っています」と言って別れました。

 私たちが支持するのは言うまでもなく新理事長による新体制です。確かに国や行政に意地悪をされれば、活動に支障をきたすでしょう。でも、これまで当たり前だとされてきたワイロという悪習を断ち切って、新しい道を切り開こうとしていることに驚きつつ、とても嬉しく思いました。たとえ茨の道だとしても、歩み続ければ前進するのです。その覚悟を持って、新しい地平を見つめようとする新理事長に心からエールを送るのでした。

 今回の現地視察には多忙を極める中、新理事長も同行し、多くの話し合いの時間を持ち、親交も深めました。これまで「支援してください」が口癖のようだった彼らが、「私たちはこのような計画や希望を持っているので、うまくいくようにお祈りください。」と言うよりになりました。相変わらず支援が必要なことに変わりはないし、言い方が変わっただけだと思われるかもしれませんが、自分たちが前を向いて歩こうとしていけば、支えてくれる人が現れるはずだ!という意識に変わってきたことは、本当に素晴らしい変化だと思いました。

 私たちも、多かれ少なかれ誰かからの助けや支えの中で生きています。そのことを忘れないで、身の回りの「支えて!」の声にもしっかり気づきたいと思うのでありました。 
園長:新井 純


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