ゆりチーム(2歳児)が昨年から飼育し始めたメダカが卵を産みました。水草に見立てて沈めたスポンジに、透明な卵がキラキラ光って付いていているのを保育士が見つけました。卵は丁寧に剥がし取り、別の水槽に移し、孵化を待っています。

 実はもっと早くから産卵していたようですが、気づかずにいました。メダカを譲ってくださった方から「もう卵産んでるやろ」と声を掛けられ、慌てて確認したところ卵が産み付けられていたそうです。卵を別の水槽に移さねばならないのは、そうしないと孵化した直後に親魚に食べられてしまうからです。魚の中にも、孵化するまで親魚が卵を守ったり、孵化した仔魚を身体にくっつけたり口の中に入れたりして育てる種類もいますが、大抵は産みっぱなしです。そして、孵化した瞬間、仔魚は親魚を含む他の魚や生物の餌となってしまいます。卵の段階から食べられてしまうこともあります。まさにワイルドライフです。

 ほとんどの野生動物は、生まれた瞬間から命の危険にさらされるため、自分で自分の命を守るための能力が備わっています。例えば、キリンやシマウマは産み落とされた直後から立ちあがろうとし、おおむね30分後には歩き始めます。そうしないと、外敵の多いサバンナでは生き残れないからです。ただし、そのためには十分に生育した状態で生まれてこなければなりません。つまり、そのくらいの能力を備えるまで母体に留まるわけです。ゾウなどは2年もの間お母さんのお腹にいることが知られています。妊娠期間が2年というのは長いですね。

 ところで、私たち人間の妊娠期間はと言うと、「十月十日」です。他の動物たちと同じように考えるなら、自分の足で立ち上がるくらいまで成長してから産まれてくるとすると、ゾウと同じ約2年間はお腹にいた方が良さそうなのに、その半分の期間で生まれ出ます。なぜなのでしょう。

 それは、一説によると脳が発達したからなのだそうです。脳がそれ以上発達すると母体の産道を通れなくなるので、身体能力としては未発達の状態だけれども、産み出されなければならないというのです。

 身体的には未熟なので、かなり手厚い保護が必要です。ちょっとでも手を抜けば瞬く間に命の危険にさらされます。病気にもかかりやすいので、その対処も求められますし、食べ物だってミルクから離乳食、そして通常の食事へと段階を踏んで食べられるようにしてあげなければなりません。これって、本当に大変なことですね!

 この大変な乳児期の保育の多くの部分をママが担っています。やはり自らのお腹の中にもう一つの新しい命が宿り出産するという奇跡を体験するからこそ成せることなのかもしれません。でも、最近はパパも積極的に保育に参加するご家庭が増えました。「ママは子を宿した時からママだけど、パパは子どもが生まれてからパパになる」と聞いたことがあります。我が身を振り返れば、そうかもなと思います。それでもいいんです。パパもどんどん成長します。なんせ伸びしろしかないんですからね。
園長:新井 純


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