寒い日々が続いています。以前住んでいた新潟県十日町市は豪雪に見舞われ、年末年始にはニュースになっていました。それを観るたびに、よくぞあの豪雪の中で暮らしてきたなと、我がことながら感心します。そして、あの除雪除雪の日々を今やれと言われてももう無理だなと思いつつも、一方では雪が恋しくもなるのですから、人間は勝手なものです。兎にも角にも、雪で難儀している地域の皆さんの健康と安全の祈るものです。
先日、ベテラン保育士が事務室に飛び込んできて、「園長先生!今ちょっとだけ時間いいですか!すぐです、すぐ!」と声をかけてきました。何かの相談かな、と思いつつ慌てているようだったので、急いで腰を上げると、保育士は「カプラ!」と叫んで事務室を出て行きました。カプラ?あ〜、そういうことか!と、部屋を出かかっていたのに、デスクに戻り、置いていたスマホ(カメラ)を掴んで後を追いました。
カプラとは、小さな板状の積み木です。全て同じ大きさ、同じ形、同じ厚さなのですが、逆にそれゆえに発展性があり、想像を超える、創造性豊かな作品が出来上がります。当園の子どもたちも大好きで、年長にもなれば大人の背丈以上の高い塔を作ったりもします。なので、保育士が興奮して園長を呼びに来るくらいの何か凄いものが出来たのだと思ったのでした。
部屋に入ると、カプラで遊んでいる子どもたちの姿がありました。もちろん、子どもたちの前には作品がありました。しかし、目に飛び込んで来るような大きな作品は見当たりません。どこかに面白い作品ができていると思い込んで見回してみても、目立つものはありません。とりあえず、年中児が年長児を真似して作ったと思われるような塔や建物のような作品があったので、その場にいた子どもたちに向かって「すご〜い!お〜、かっちょええ!」と驚いてみました。
ところが、です。私を呼びに来たベテラン保育士が、「先生、こっち!」と促しました。そちらを見ると、カプラの板を単純に螺旋状に積み上げた30〜40cmくらいの高さの塔がありました。シンプルですが、作るのが難しい見事な螺旋でした。「えっ?これ?」と聞くと、満面の笑みを浮かべる保育士。「これを見て欲しかったの?」ともう一度聞くと、満足そうに頷く保育士。確かに、シンプルながら子どもが作れるようなものではありません。高い集中力とバランス感覚が求められるからです。でも、まさか保育士が自分の作品を見て欲しくて呼びに来るとは思ってもみなかったので、一瞬ずっこけた後、大笑いしました。
子どもたちと遊んでいると、いつの間にか夢中になってその世界に入り込むということがよくあります。子どもはリアル(現実)とファンタジー(空想)を行ったり来たりしているものですが、大人もまた夢中になる時には夢の世界を旅することができるのです。
新型コロナ禍でステイホームを強いられる日々ですが、こんな時だからこそ子どもと一緒に夢中になって遊ぶのも一興です。子どもたちは、きっとその時間を覚えていてくれますよ。
私を呼びにきた保育士は、新しいカプラだから出来た、と言い、まんまと2000ピース買い増しの承認を勝ち取りましたとさ。
園長:新井純