イエスさまがお生まれになった時、東方からやってきた占星術の学者たちがエルサレムを訪ね、王宮でヘロデ王に「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおられますか?」と尋ねました。でも、そんな話、誰も聞いたことがありません。なぜなら、イエスさまは王様として生まれたわけではなく、庶民的な何でも屋さんのような大工さん夫婦のもとに生まれたからです。

 もちろんヘロデ王にとっても「はて?なんのことやら?」という出来事です。自分こそが王であり、自分の子どもが王位を継承するはずです。なのに、突然「王として生まれた者がいるらしい」と言われても戸惑うばかりです。

 でも、戸惑ってばかりもいられません。この報せをもたらしたのは占星術の学者ですから、未来のことを預言しているとしたら、自分や子どもたちの地位が危ういということを意味します。安穏としていたら、王座を追われてしまうかもしれません。ヘロデ王は東方の博士たちに「見つけたら知らせて欲しい。私も拝みに行こう」と伝えました。ところが、博士たちはイエスさまを見つけて拝んだ後、夢の中で「ヘロデのところには行くな」とお告げがあったので、帰りは別の道を通って帰って行きました。

 博士たちが報告に来ないと気づいたヘロデ王は、お抱えの学者たちに命じて、救い主がどこで生まれることになっているかを古い言い伝えなどで調べさせました。すると、それがユダヤのベツレヘムという村であることがわかりました。しかし、赤ん坊を特定することはできません。そこでヘロデ王は、ベツレヘムとその周辺にいた2歳以下の男の子を皆殺しにするという暴挙に出たのです。

 イエスさま大ピンチ! しかし、惨劇の前夜にイエスさまの父ヨセフに夢のお告げがあり、その夜のうちに両親はイエスさまを連れてエジプトに逃げて行き、難を逃れたのでした。

 権力を持つ者が、その力の使い方を誤るとこんなに恐ろしいことが起こるのです。そして冷静さを失うということは、どんなに愚かなことかということもわかります。私たちの生きる世界には、理不尽なことも少なくなく、善いもの、善いことばかりで構成されているわけではありません。戦争や紛争も後を断ちません。そんな荒波の中に、やがて子どもたちも出帆していかなければならないのです。

 でも、だからこそ、せめて私たちの子どもたちには、善いものを見つめ、善いことの実現を志す人生を歩んで欲しいと願っています。神さまからの愛と恵みは、自分のためだけでなく、みんなで分かち合うためにいただいているからです。そのことを味わい知るクリスマスにしたいと思います。
 園長:新井純


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