子どもが小さかった頃、先輩を訪ねてアメリカ西海岸へ旅行したことがあります。長男が年長組、次男が1歳半でした。恥ずかしながら薄給だったので渡航費はアルバイトをして稼ぎ、滞在費や現地で使うお小遣いは、趣味で使っていた釣具のルアーをヤフーオークションで売ってかき集めました。ホテルなどは日本で予約するととても高かったので、今ほど便利ではなかったインターネットを使い、レンタカーや現地のモーテルに直接予約を入れるなど、「ほんまに大丈夫なん?」と不安だらけの準備となりました。
小さな子どもを連れて海外旅行をした方々の経験談を参考に、荷物を極力減らしつつ、大きなスーツケースの片面は全て次男の紙オムツで埋められるというユニークなパッキングをして出発。飛行機の中で子どもがぐずったりしないよう入念な準備をしたことも功を奏し、快適なフライトで旅を始め、サンディエゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコと、旅を楽しみました。
旅の目玉の一つは、ディズニーランドでした。東京ディズニーランドの方が大きくて立派なのですが、親の方はやはり本場?本家?そんなイメージを持っていたので、まるで聖地にでも来たかのような気の高ぶりようでした。
このテーマパークを限られた時間の中で、いかに効率よく楽しむかは大きなテーマでした。待ち時間を極力減らし、ショーの時間と並び時間の調整など、刻々と変わる状況にいかに対応しようか、そればかりを考えていました。そのため、「あれに乗りたい」「あそこにはいつ行くの?」という子どもの声は、うっとうしいものに聞こえてしまい、「必ず行くから!」「考えてるんだから黙って!」みたいに、子どものことを全く考えない、絵に描いたようなダメ親になり下がってしまいました。それに気づきながらも自制できない自分にもイライラしたのを思い出します。
その夜、妻と共に猛省しました。私たちは一体何をしにここへ来たのか?子どもたちのためと言いながら、子どもたちはイライラしてる親のせいでまるで楽しめてなかったのではないか?旅の目的、ここに家族で来た意味をもう一度振り返ってみよう、と。
そして、相談の後、子どもたちにこう宣言したのです、「明日は〇デーにする(〇は長男の名前)」それは、子どもが行きたい場所へ行き、乗りたいものに乗り、観たいショーを観るという、実に単純なものでした。効率などは考えない、無駄な時間もたくさんできるかもしれないけど、本当の意味で子どもたちが思い通りに楽しめる時間を作り、その時を一緒に過ごすというものでした。
結果は、前日のイライラは何だったのかと思うほど、楽しくて充実した1日を過ごしました。無駄な時間もほとんどなく、日差しの強い時間にはホテルに戻ってプールで遊ぶ余裕もできたほどでした。何より、子どもたちは前日のように不安そうな表情を見せることなく、どこまでも明るく、楽しそうでした。それを見る私たち親の顔もずっとにこやかだったのは言うまでもありません。
その時にしか経験できないことは、いつまでも心に残ります。苦労したことも、心砕いたことも、振り返ってみれば、知恵と力の源となっているのです。
園長:新井 純